近年、企業成長の手段としてM&A(企業の合併・買収)が注目されています。
特に、急成長を遂げる企業にとって、短期間で事業領域を拡大し、競争力を高める手段としてM&Aは極めて有効です。その代表的な事例の一つが、デジタルマーケティング業界で存在感を増す「マクビープラネット」の戦略です。
マクビープラネットは、電通グループや博報堂グループといった業界の巨大プレイヤーと対等に戦うため、戦略的なM&Aを推進し、グループ全体の成長を加速させてきました。
本記事では、マクビープラネットの経営層へのインタビューをもとに、同社がどのような視点でM&Aを捉え、実行してきたのかを深掘りしていきます。
M&Aを単なる規模拡大の手段ではなく、業界再編や企業価値向上のための重要な戦略と捉えるマクビープラネットの経営哲学に迫ります。
※ 役職などは取材時点となります。(取材日:2024年10月10日)
PDFファイル URL:http://strategy-campus.jp/topics/wp-content/uploads/2025/04/Interview_MacbeePlanet.pdf
−− 本日はよろしくお願いいたします。
マクビープラネットはデータを活用したマーケティング分析サービスを提供されていて、2023年には同業種でデジタルマーケティングサービスを提供されているネットマーケティングを買収されたことも記憶に新しいですね。
お話をお伺いするのをとても楽しみにしていました。
ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
−− マクビープラネットは、積極的にM&Aを行っていますが、会社の戦略としてM&Aを意識されているのでしょうか。
マクビープラネットの事業戦略として、M&Aは強く意識しています。
広告代理店業界は、電通グループ・博報堂グループといった古くからの巨大な競合がいる中、マクビープラネットは後発で規模も小さい企業です。
大手企業と対等に向き合っていくために、短期間で成長し、今ないピースを取りに行くことを意識して積極的にM&Aを行っています。
−− 電通グループや博報堂グループと対等に渡り合っていくには一定の規模が必要になりますよね。
M&Aを意識されたのはいつごろからでしょうか。
本格的にM&Aを意識し始めたのは上場後からです。
上場当初から大型M&Aを行いたかったのですが、初めはマクビープラネットの規模も小さく大型案件は狙えませんでした。
なので、初めは比較的規模が小さい案件を見ていきながら、大型M&Aができる組織体制を構築していきました。
−− 小規模なM&Aを検討されていた主な目的は、将来に大型案件をするための組織体制作りだったのでしょうか。
目的として、将来大型案件を行うための組織作りもありましたが、あくまでも主目的は当時のマクビープラネットの企業ステージに応じた事業成長でした。
もちろん組織体制作りといっても、M&Aのためだけではなく、会社としてのコーポレートの組織体制を整えており、M&Aも含めた企業成長を考えていました。
−−なるほど。では、23年1月に行われたネットマーケティングのM&A(M&A金額54億円)はいつごろから検討されておられたのでしょうか。
ネットマーケティングのM&Aを検討し始めたのは、上場時の2020年にさかのぼり、上場当初から一番M&Aしたい企業がネットマーケティングでした。
当時の時価総額はネットマーケティングが120億円、マクビープラネットが60億円と、到底買える会社ではありませんでした。
そして、お互いの時価総額のタイミングを見計らいながら、良いタイミングで一気にM&Aに乗り出しました。
−− 上場初期からネットマーケティングのM&Aを検討されていたんですね。
ネットマーケティングのどのような点を魅力的と考えておられたのでしょうか。
広告業界には電通グループ・博報堂グループといった大きな双璧がいて、彼らと対等に戦っていくためには如何に速く規模を拡大できるか、が重要と捉えていました。
そして、マクビープラネットがサービスを展開するデジタルマーケティング領域の競合となる企業は、当時はネットマーケティングともう1社ほどしかありませんでした。
マクビープラネットの従業員や顧客企業の相性も考慮した上で、ネットマーケティングをM&Aの対象と考えていました。
また、顧客企業の相性の中にも、マクビープラネットが欲しいお客さんをネットマーケティングがお付き合いされていたことも魅力的に感じていたポイントです。
−− なるほど。打倒、電通グループ・博報堂グループの意図でM&Aを検討されたんですね。
一方、ネットマーケティングからすると競合企業であるマクビープラネットからM&Aされることに懸念があったのではないでしょうか。
そこが、今回のM&Aで配慮していた大きなポイントの1つでした。
私たちがネットマーケティングをM&Aする目的は、広告業界を変えていくことです。
ネットマーケティングとマクビープラネットの2社が合わさることで、業界再編できることをネットマーケティング CEOの靱江さんに伝えていました。
なので、M&Aの目的が、競合企業をM&Aし、ただ単に事業を大きくしていくことではないことをきちんと伝え、純粋に業界を変えていきたい気持ちを丁寧に会話していました。
−−競合企業のM&Aは捉えられ方を誤解されてもおかしくなく、純粋に思いを伝えることが大事ですね。
そうですね。競合企業なので、変に誤解されないようにしっかりと対話することを心がけていました。
また、M&A後にネットマーケティングとマクビープラネットに上下と思われる関係を作りたくなかったので、HD体制を取り2社の事業が横並びになる体制を取っています。
言葉も丁寧に扱い、子会社という言葉を使わずグループとし、一丸となって事業に向き合える環境を徹底しています。
−− 競合企業が同じグループになると、企業カルチャーや組織運営の違いなどから社員同士の動き方や現場への落とし込み方などに、難しさはあるのでしょうか。
MAVEL(旧:マクビープラネット)とAll Ads(旧:ネットマーケティング)の社員同士の特段小競り合いなどはありません。
(マクビープラネットは、ネットマーケティングを完全子会社化した後、持株会社体制への移行を進め、2023年11月1日付で完了。この移行に伴い、Macbee Planet準備会社は「MAVEL」に改称、ネットマーケティングは「All Ads」に改称。参考:URL)
また、HDにはエンジニア部門、コーポレート部門、MAVELとAll Adsにはそれぞれ営業部門があるなど、MAVELとAll Adsとで、共通して活用できる部門はHDに配置しています。
また、21年にAlphaをM&Aしましたので、Alphaのエンジニアをそのままエンジニア部門として活躍いただいています。
−− M&Aした各企業や各人が適材適所で取り組まれているんですね。
−− マクビープラネットでは、エンジニア部門の人たちはどういったモチベーションで働かれている方が多いのでしょうか。
エンジニア部門で働かれる方々は、自分のスキルやキャリアを磨くことがモチベーションとして働かれている方が多いと思います。
一般的に営業部門であると、社内の営業同士が同じお客さんに対してアプローチし、どっちが受注したかどうかなどが分かり、いがみ合いが生まれる可能性があると考えています。
一方、エンジニアはお互いが個人のスキルをリスペクトし合い、業務も他の方と比較するよりも、価値が出ているかを重視して働かれている方が多いと思います。
また、エンジニアのモチベーションを上げるためのマクビープラネットの取り組みとしても、エンジニア自身の能力が市場でどの程度通用するのかを把握するため、や新しい知見を得ていただくためにも、海外の先端事例などを共有する勉強会も催したりもします。
−− なるほど。では、グループ会社としてエンジニアの求心力をより高めるの工夫は、どのようになされているのでしょうか。
CTOの露木が非常に優秀で、エンジニアの方々は露木を中心に業務にコミットしており、エンジニア部門の組織構造も露木を中心としたピラミッド組織を取っています。
一方、逆に求心力がCTO頼りになってしまっていることも課題です。
また、HDにエンジニア部門を置いているので、事業やプロダクトとの距離が遠く、エンジニアが直接、事業・プロダクトの向上に100%コミットできる組織体制になっていないことも課題として挙げられます。
−− CTOの露木さんを中心にエンジニア部門が構成されているんですね。
エンジニア部門が事業・プロダクトから離れている組織構造ですが、プロダクトに対して責任を持っているのは別の部署となるのでしょうか。
いえ、プロダクトの開発の責任はHDのエンジニア部門が持っており、事業部は別の切り口で事業別(アフィリエイト事業、リスティング事業など)に責任を持っています。
一方、組織構造上、エンジニアはプロダクトの開発にフォーカスしているため、事業に対するコミットが薄くなってしまっています。
なので、組織的な課題としては、プロダクトを開発から拡大まで一貫して管轄するリーダーがいないところが、現状の課題と捉えています。
理想的には、各事業部(MAVEL、All Adsなど)に専属のエンジニア組織を置き、プロダクトの開発から事業拡大までコミットすることが事業成長の観点では良いとも考えています。
−− 一長一短で悩ましい問題の中、今後のエンジニア部門の組織体制はどのようにお考えでしょうか。
現状の組織体制の課題として、エンジニア部門と事業部を紐づけるための橋渡し役が不足していると考えています。
上記の課題をM&Aと紐づけて考えてみると、エンジニアの会社をM&Aし、エンジニアの組織と顧客基盤が得られたとしても、既存事業との接続は埋め合わせできないことが明確な課題として残ります。
なので、M&A先の理想的な企業としては、広告業界の経験がある事業開発部門やエンジニア部門を携える企業をM&Aしたいと考えています。
−− エンジニア部門と事業部をうまく繋ぐ、事業開発のニーズは高いですよね。
マクビープラネットの環境下で事業開発に求められる人材は、どのような素質や能力が必要と考えておられますか?
マクビープラネットに必要な事業開発の形態は様々あると考えていますが、以下の2つの要素を重視しています。
1つ目が、多数の経営資源を組み立てられる能力。
2つ目が、業界歴があり、市場環境やデータ、現場からの声などから「将来こういうことが来るよね」と予測できる能力。
ブレイクスルーするためには、上記の2つの要素をうまく連携させる必要があると考えています。
−− 挙げていただいた2つの要素は非常にレベルが高いですが大事ですよね。
具体的にどのような経歴を持つ人が当てはまるなどの像はありますか。
事業開発として、コンサル出身の方は上手く稼働いただけると考えています。
先ほどお伝えした通り、マクビープラネットの現状の課題は、プロダクトを開発から拡大まで一貫して管轄するリーダーが不在で、エンジニア部門と事業部門を紐づける橋渡し役が不足していることが課題となります。
コンサルワークの1つとして、自らリーダーシップを取り、様々な分野の人をまとめ上げていくところにあると考えていますので、コンサル出身の方はフィットすると考えています。
また、社内の色々な方と関わり、事業をより深く理解しているという観点からも、中小規模の広告代理店やデジタルマーケティング企業で、経営企画を担われてきた方なども上手く稼働すると考えています。
−− 確かにコンサルや経営企画出身の方はマクビープラネットにフィットしそうですね。
一方、コンサル出身の方が事業会社に来るとコンサルっぽさをぬぐう必要があると考えていますが、その点はいかがでしょうか。
コンサルっぽさを消していただくのは確かにそうです。
みんなを巻き込んで事業を推進することが必要であり、事業会社でみんなが事業に向き合っている中で、理想を語る評論家になってしまうことは避けなければいけません。
また、もちろん1人採用するだけで、現状の課題を解決することは不可能だと考えていますので、チームを組成して取り組んでいきたいと考えています。
一方、チームアップの構想もまだまだ仮説段階であり、現時点は上記のような組織を作っていきたいなという段階です。
−− M&AはM&A前のPowerPointやExcelなどの構想上では上手くいきますが、会社の既存のリソースとマッチしないことも多数あると考えています。
マクビープラネットのエンジニア部門を見ると、CTOの露木さんを中心にうまくPMIが行えているかと思いますが、CTOは求心力を持つためにどのようなことをなされていたのでしょうか?
CTOの露木は、Slackなどを活用して、情報共有が円滑に行える仕組みを作っていて、はじめは露木が調べたことや仕事の気づきなど積極的にみんなに共有していました。
また、社内でエンジニアの発表会をやってもらうことで、色んな人に認知してもらうことなども積極的に取り組んでいます。
また、通常業務外で合宿なども行い、露木を中心にチームアップされています。
マネジメント能力だけでなく、エンジニアとしての能力やスキルの観点からも、新入社員で露木の能力を知らない人は、「露木さんはすごいらしい」というイメージを持たれている方が多いです。
イメージで終わらせるのではなく、露木は自らの発言や働き方を見せることで、露木のエンジニアとしての能力・スキルを知ってもらうことも、意識して行なっています。
−− やはり自ら仕事に対する姿勢や能力を見せることは大切ですよね。
私自身も28歳の時に、平均年齢が40歳の企業をM&Aし、はじめは「若者が何ができるのか」という目で見られていましたが、自ら行動して見せることでみなさんの理解も得られた経験があります。
−−ネットマーケティングをM&Aされる前とM&Aされた後で、どのようなギャップがありましたか。
事業面ではM&A前後で大きなギャップは感じませんでした。
一方、良い意味でギャップがあったことに驚きました。
というのもM&A時、マクビープラネットは創業から7~8年程度で中途社員で構成された企業でしたが、ネットマーケティングは創業から20年近く経つ企業で、企業の歴史が違っていました。
ネットマーケティングのフロントのレベルの高さもちろんですが、コーポレートを含めた組織の力の強さを実感しました。
なので、M&Aによって企業としてのコーポレート・ガバナンス体制の強さを得られたことは、良い意味でのギャップでした。
−− 組織や事業が拡大する中で、コーポレート・ガバナンスを整えるのは重要となりますよね。
M&A後に具体的なコーポレート・ガバナンスで変更したこととしてどのようなことがありましたか。
現在のマクビープラネットのコーポレート・ガバナンス部門のトップを、ネットマーケティングで同じ役割を担われていた方に担当してもらっています。
彼は管理統制にとても長けており、彼の力もあり上場市場のプライムへの鞍替えも行えたと思います。
−− なるほど。一方、M&A先の方がコーポレート・ガバナンス部門のトップを担われることに、マクビープラネットとして懸念されたことはありませんでしたか。
元々、マクビープラネットの経営層は私(千葉)も含め、CTOの露木や執行役員経営企画本部長の川上なども中途入社で役員・執行役員になっている人も多く、特段な懸念はなかったです。
組織体制に限らずですが、マクビープラネットの企業カルチャーの強さとして、より上手くいく方法は積極的に取り入れることで、どんどん変化していき、良い意味で「色」がないことが強さだと考えています。
様々な企業をM&Aしていますが、内部で変に争うのではなく、環境に合わせて変化し続け、グループ全体で伸びていればそれで良い、という考え方で日々向き合っています。
−− 環境に合わせて常に変化し続けているので、M&Aによる組織的な変化もアップデートと捉えられているんですね。
では、マクビープラネットには様々なバックグラウンドを持つ方々が在籍されていますが、成長を遂げられた要因をどのように分析されておられますか。
マクビープラネットの代表取締役社長が創業者の小嶋から千葉に代わったことが、成長を加速するターニングポイントと捉えています。
もちろん、小嶋が代表取締役社長を務めていた時が成長が鈍かったという意味ではなく、マクビープラネットの成長フェーズが変化したという意味合いです。
M&Aで企業をM&Aする際に、小嶋が考えていなくとも、M&Aされる企業からすると、オーナー企業の傘下になるなど、ネガティブに捉えてしまう方もおられるかと思います。
一方、創業者でない千葉が代表取締役を担うことで、一緒にマーケット・業界を変えていくという思いに賛同いただき、環境に合わせて組織や事業なども柔軟に変化していきやすいです。
また、千葉は人材の能力を引き立てることが上手く、様々なバックグラウンドを持つ人が在籍する中で、千葉を中心に各人が得意な能力を発揮できる組織になっているかと思います。
−−マクビープラネットのM&Aを含めた企業成長には千葉さんの存在が大きかったんですね。
マクビープラネットは短い期間の間で、M&Aの多数行っているので、企業カルチャーなどで組織を統率していくことは難しいと考えています。
なので、あくまでも個々の才能を最大限発揮させることを重視しています。
また、M&Aした企業から経営陣を含めた方を迎え入れ、力を十分に発揮いただくためにも、会社として活躍できる環境を整えることを心がけています。
−− 競合企業であるサイバーエージェント社や電通グループ・博報堂グループなどと対比した際、自社の強さをどのように捉えられているのでしょうか。
サイバーエージェント社や電通グループ・博報堂グループは、顧客企業からの報酬体系として、成果報酬よりも固定報酬や手数料報酬を中心に設定していると思います。
一方、マクビープラネットは、成果報酬のみでいただいており、そこが他社と比較した際の一番の違いであり、強みと考えています。
成果報酬と固定報酬の違いをコミットする対象で考えると、固定報酬は成果物を作ることにコミットし、成果報酬は施策の結果にコミットしています。
これは、顧客企業の最終的な売上に対する責任を顧客企業と代理店のどちらが持つか、の違いだと考えています。
マクビープラネットがリスクの高い成果報酬に踏み切ることで、顧客企業はリスクを軽減し投資できます。
結果にコミットするためにリスクを取ることが、マクビープラネットの強みであり、他社との差別化要素と捉えています。
−− なるほど。自社のサービスに自信があるからこそできることですね。
組織面では、他社と対比した際、自社をどのように捉えられているのでしょうか。
サイバーや電通グループ・博報堂グループと比較した際、まず第一に組織規模が全く異なります。
※ マクビープラネット:159人(連結:2024年4月時点)、サイバー:7,720人(連結:2024年9月時点)
電通グループ:71,127人(連結:2023年12月時点)、博報堂グループ:15,910人(連結:2024年3月時点)
一方、少し尖った表現になりますが、大手企業の広告代理店などは、「人が多い」のではなく、「人が余っている」という認識でいます。
人が余っている組織では、その分の仕事を作る必要があり、否応にも事業領域などを広げる必要も出てきます。
マクビープラネットは一人当たりの生産性や事業領域にこだわることを前提に採用や組織体制を考えているのが、他社と比較した際の組織規模の違いとして現れてると考えています。
−− 各々が生産性高く働ける環境は大切ですよね。先ほども個々の強さを発揮できる環境づくりと仰っていましたが、社員の方々がモチベーション高く仕事に取り組むために心がけていることはありますか。
社員の方々にモチベーション高く働いてもらうためにも、役職・役割を上げられる機会を提供することです。
現状、マクビープラネットは、まだまだ小規模な組織であり、企業としても成長しているので、ポストも空いています。
また、今後もM&Aや採用を行なっていく中で、ポストを用意するためにも、企業として成長し続ける必要があります。
−− では、各人がやりたいことに対して、手を挙げると仕事ができる環境なのでしょうか。
はい、もちろん能力や信頼があることが前提にはなりますが、各人がやりたいことは積極的に取り組める環境です。
また、各人に子会社を設立して、経営をしていきたいという思いがあればできる、それもできる環境であります。
子会社の設立はグループ全体として事業を伸ばすことが主目的ですが、人材育成や人材の引き留めの観点も大きいです。
その際、各人のやりたい思いはマストで、既存事業とは被らない領域であることも必要があると考えています。
また、グループ会社の社長は、その会社の予算もですが、グループ全体を含めた予算を把握する必要があるので、事業計画を作れるかもグループ会社の社長に求められる要素となります。
−− 各人の能力や思い次第で、やりたいことが実現できる環境は素晴らしいですね。
−−マクビープラネットのグループ会社での採用はどのようになされているのでしょうか。
最近は、子会社を作ることも多く、現時点でグループ会社が8社います。(2024年9月時点)
全てグループ会社の採用を本社では行えないので、各グループ会社で分担して採用活動を進めており、グループ会社ごとの採用に関する予算も設けています。
−− HDとグループ会社の棲み分け、グループ会社のマネジメントはどのようになされているのでしょうか。
結論として、適当なバランスで対応しています。
HDとグループ会社を完全に分けて事業を進めていく判断もあるかと思いますが、そのような形式はとっていません。
本体の事業部であると柔軟に動けない場合もあるので、子会社化し各人が裁量を持って事業を運営しています。
−− やはり、HDの部長と子会社の社長は人材育成や組織マネジメントの観点で異なりますでしょうか。
一般的に人の成長の面で、本社の部長よりも、子会社の社長の方が成長すると言われていますが、それは人によると感じています。
一方、子会社の社長になると、その人の人間性が明確に出てきます。
例えば、本社の部長であると、変に自分の城を築き、殻にこもってしまう人が一定数います。
子会社の社長であると自分の城を作ろうとしなくとも、社長であることで自分の城が作れているので、子会社を伸ばすための動きにフォーカスされると感じています。
−− マクビープラネットの顧客基盤の強みはどういったところにあるのでしょうか。
マクビープラネットの顧客基盤は、証券業界で強く、証券会社であるとほとんどの企業と取引があり、提供サービスの幅も含め、競合他社には負けない自負があります。
もし証券業界の顧客企業の内、中堅企業の数社が他社にリプレイスされたとしても、マクビープラネットのバイイングパワーが強く、形勢は傾かないです。
例えば、アフィリエイトの支援をしている顧客企業が、リスティング広告をしたいとなると、マクビープラネットにご相談いただき、仮にマクビープラネット単体で対応できなくともグループ会社を紹介しマクビープラネット圏内で顧客企業をサポートできます。
これはマクビープラネットの顧客基盤としての証券業界の話に限ったことではなく、広告業界の顧客基盤においては他の業界も同様です。
デジタルマーケティング業界で事業を確立するには、各業界で面を取り、寡占化することが最も重要となります。
−− 業界の寡占度合いで決まるんですね。では、顧客企業からマクビープラネットのサービスが薄い領域を依頼された際はどのように対応されるのでしょうか。
マクビープラネットのグループ内でも対応できる企業がない場合は対応が厳しいですが、ほとんど対応できると言っても過言ではないです。
対応領域を広げるためにも、M&Aを行ってきており、元々マクビープラネットとネットマーケティングは同じデジタルマーケティング業界ですが、異なった領域を扱っていたので対応できる領域はかなり広いです。
−− コンサル業界も似た構造で、経験がない領域の依頼を顧客から受けても、グループ企業やパートナー企業の領域内であれば対応できるので、領域を広げることは重要ですよね。
コンサル業界も似た構造なんですね。
24年6月にPRクラウドテックをM&Aし、デジタルマーケティングの「認知領域」も対応できているようになり、顧客企業から獲得の相談もいただけるようになりました。
PRクラウドテックをM&Aする前は、デジタルマーケティングの「獲得領域」に特化していましたが、PRクラウドテックのM&Aにより「獲得領域」の潜在客を増やすための「認知領域」も対応できるようになっています。
−−なるほど!対応領域が広がるごとに顧客企業との関係性が強くなっていき、企業規模の拡大につながるんですね。デジタルマーケティング業界とM&Aはとても相性が良いですね。
まさに、デジタルマーケティング業界とM&Aは親和性がとても高く、マクビープラネットを違う業界で例えると、エンタメ業界のGENDAのモデルに近いと思います。
デジタルマーケティング業界に属している企業が持っているサービスは素晴らしいものが多いです。
一方、顧客企業の大きな課題を解決するためには、単一のサービスだけでは難しい場合が多いです。
なので、マクビープラネットのグループ会社に入っていただくことで、共に顧客のより大きな課題を解決できるという座組です。
−− PRクラウドテックは創業当時から業績は順調だったのでしょうか。
PRクラウドテックは創業当初から業績は順調だったと聞いています。
というのも、PRクラウドテックの代表を務められている中島は、元々リクルートや楽天に在籍され、ベクトルでCSOも担っておられました。
中島がPRクラウドテックで、独立されてからも元々の経営者のリレーションがあり案件をいただいていたようです。
−−事業を推進する上で、人とのつながりは大事ですよね。
はい、中島が持たれている人脈はマクビープラネットの経営層の人脈とは異なりとても心強いです。
中島はITバブルのころ、CYBIRD (サイバード)で過ごされておられ、USENの宇野さんなどとも仲が良く、「千葉さんがUSENの人と話したいなら、宇野さんに言っておくよ」なども気軽に仰っていただけます。
また、マクビープラネットの経営層の人脈もそれぞれ異なっており、広い業界・領域をカバーし合えています。
−−経営陣の繋がりも活用し事業の領域を広げられているんですね
潜在顧客の経営陣と会話される際、何か心がけていることはありますか。
デジタルマーケティングなどの専門的な知識だけでは経営者とは対等に会話できず、当たり前のことではあるんですが、相手企業の立場を理解し、経営目線で会話することをいつも心がけています。
一方、会話する内容としては、マクビープラネットの強さであるデジタルマーケティング領域とつなげ、PRや顧客獲得は経営マターになりやすいので、それらに関する課題をヒアリングするようにしています。
たまに経営者との会話の中で、デジタルマーケティングのコアな話になることもあります。
私(千葉)がデジタルマーケティングの現場から少し離れているため、会話についていけないと感じた際は、上段の論点にもっていき、次の商談につなげることも心がけています。
−−他社との提携や共同提案などには取り組まれているのでしょうか。
提案の幅を広げるために、共同提案に取り組もうと思っていますが、実際の取り組みまで至るケースは限られます。
博報堂グループとの取り組みであると、Hakuhodo DY ONEと共同で取り組みを行っています。
博報堂グループは、アフィリエイト広告の分野で、マクビープラネットに相談をいただいており、マクビープラネットとしても提案の幅が広がり、また博報堂グループの顧客基盤と接点も持ちたいので取り組んでいます。
−− 新しい領域や新規事業に取り組む際、M&Aと自社内での立ち上げ、の大きく2つあるかと思います。マクビープラネットでは2つのすみ分けはどのようになされているのでしょうか。
マクビープラネットで新規事業や新しい領域でやりたいことが多いんですが、自社で立ち上げる際、事業や子会社の責任者になる人が限られることが課題となっています。
また、社内で責任者になれる人がいても、既存の業務でパツパツな方が多いです。
なので、M&Aは事業と合わせて、既に成立している組織も合わせて取り込めるので、とても有益と考えています。
先にお伝えした通り「デジタルマーケティング」×「M&A」はとても相性が良く、投資対効果も高いです。
これからも企業の組織環境や外部環境なども含め、M&Aと自社立ち上げを検討していきたいと思います。
−−M&Aした会社の方々がマクビープラネットで働き続けるモチベーションはどういったところにあるとお考えでしょうか。
M&Aの対象となる企業に対しては、「私たちが描いているビックピクチャーに対して、一緒の船に乗りませんか?」と説くことが多いです。
先ほどもお伝えした通り、ネットマーケティングをM&Aした際には、経営陣や従業員の方々から「一緒に経営・事業を行うことで、何か大きなことができるのではないか。」と、ワクワク感を買ってもらい、それがモチベーションになっていると思います。
一方、M&A対象の会社が創業社長の方で、「自分の考えでやっていきたい」と考えられている人は合わないなと感じています。
また、世代や人にもよると思いますが、特に未上場会社の経営者は上場会社で経営することに憧れを持たれている方は一定数おられると考えています。
−−ビックピクチャーに対して、グループ会社で一丸になられているんですね。
また、私自身も上場企業の役員を経験しましたが、役員になる前は上場企業の経営に憧れていた内の一人です。
そうですよね。
より一層事業にアクセルを踏むためやご自身の成長のためにも、他の経営者がいる中で、経営をしていきたいという経営者も一定おられると感じています。
PRクラウドテックの中島は、他にも事業を行っておられ、その事業もマクビープラネットに巻き込んでシナジーを生み事業を進めていきたいと考えております。
−− 上場前にベンチャー・キャピタル(VC)が入ると、高値で売却する必要があると思いますが、M&Aを行う立場としてその観点はどのように考えておられますか。
適正価格でM&Aすること&経営層や社員に還元するためにも、ディール価格を少し抑えて、M&A後のインセンティブを高く設定することを心がけています。
一方、上記の考えを多くのVCが参加するセミナーで話したことがありますが、VCの方からは顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまいました。
とは言うものの、VC・PEが入っている企業のM&Aを狙う際は、対象企業やVC・PE、自社のためにも買い方を工夫する必要があり、いずれの組織も利益がある方法を模索しています。
−− HDやグループ会社別に給料テーブルやインセンティブ設計はどのように運用されておられるのでしょうか。
個人的に従業員に関しては、ストックオプション(SO)なども有効と考えるものの、ボーナスの方が強く機能しているとも考えていますが。
給料テーブルやインセンティブ設計は、グループ内で複数存在しています。
グループが増えていくにつれて、考えるべきことも多く、難しくなっています。
ネットマーケティングをM&Aした当初は、統合することを目指して動いていましたが、杓子定規にやってもうまく行かないことが多いです。
なので、現在はM&Aや企業統合をなされている他社などに事例をヒアリングして、日々試行錯誤しています。
−−グループが増えると一律に規定するのは難しいですよね。
全員が納得のいく給料テーブルや評価制度は設計できないと思いますので。
他社へヒアリングされている中で、何か気づきなどはございましたでしょうか。
ヒアリングは、LINEやYahoo!、カルタHDなどM&Aを繰り返してきた会社で、各社のアイディアや経験を参考にさせていただいています。
給料テーブル・インセンティブ設計の観点で、ヒアリングさせていただいた企業の中でも、上司よりも部下の方が年収高いことが平気で起きているとお聞きし、そうだよなと共感していました。
また、上司は部下の年収が高いことも知っており、その状況を許容する人しか組織にいないとのことでした。
マクビープラネットグループに今後も複数の会社が入ってくるとより複雑になるので、グループや各社の元々の制度や設計を残しつつ、ドライに判断する場面も出てくるかと考えています。
−− 部下が上司よりも高い給料であることは、他の企業でも発生していますよね。
今までの当たり前では通用しなくなっているとも感じています。
そうですね。
一方、個社別に給料テーブルやインセンティブ設計は違えど、マクビープラネットグループで社員共通の譲渡制限付株式(RS)を発行するなど、全社一丸となる取り組みは行っています。
−− なるほど。全体的にM&AのPMIにおける組織設計は難易度が高く、無理やり統一しても上手くいかないことが多く、悩ましいですよね。
M&Aでマクビープラネットグループに参画いただく会社が、なぜマクビープラネットグループで一緒にやっていただけるのかを常に意識しています。
お金の面では、マクビープラネットグループは決して高くない金額をM&Aの対象企業にオファーしており、お金以外のキャリア・やりがいなどを目的に参画いただけると考え、私たちも業界を覆していく仲間と意識しています。
また、PMIでは、参画いただく経営者がマクビープラネットグループに入る理由・目的を社員に伝え、納得してもらえることが重要と考えています。
−− そうですね。経営者の理由に納得度・説得度を増すために、あえて一番高い価格でM&Aしないということもありますよね。
それもあると思います。
どうしても高い価格でM&Aしてしまうと、従業員の経営陣に対する見え方が変わってしまうのも、人の心理だと思います。
−− ネットマーケティングのM&A時に、フルローンで実行されたのは素晴らしいですね。
なぜフルローンを選ばれたのでしょうか。
フルローンにした理由は、自己資金が潤沢にあるわけでもなく、今後も成長していくために自己資金を確保し、投資の可能性に重きを置いていました。
−−金融機関とのコミュニケーションで意識されていたポイントはあるのでしょうか。
日頃の金融機関とのコミュニケーションを大切にしていて、銀行の担当者も杓子定規ではなく、よりよいM&Aのスキームなど親身になって、我々の味方として考えてくれていました。
また、今後資本調達などする際、その銀行を利用させていただくことも約束していました。
その中で、口約束の企業もありますが、日々の取り引きの中で、マクビープラネットの経営陣であると、やってくれるなと信頼もいただいていたと思います。
他にも企業のM&Aを検討していた時、他社がマクビープラネットの3倍の企業価値を算定しM&Aを実施し、M&Aでは負けてしまいましたが、結果として高値掴みとなってしまっていました。
このM&Aが結果的に、銀行からマクビープラネットのデュー・デリジェンス(DD)の信用度が高まり、より信頼いただけるようになり、今も「マクビープラネットがDDしたM&A案件なら安心して貸付しやすいです。」と仰っていただいています。
−− M&Aの借入にはコベナンツは何か入っているのでしょうか。
M&A対象企業がグループ会社を維持することや金利に対する収益の割合など一般的な範囲で厳しい条件は特段入っていない形です。
日々、銀行の重点クライアントになることを意識して取り組んでいます。
−−日頃の金融機関とのコミュニケーションで意識されているポイントはあるのでしょうか。
銀行や証券会社の担当者と持ちつ持たれつの良い関係性を作ることを意識しています。
金融機関のマクビープラネットの担当者も私たちからの融資が増えると、金融機関内の評価も上がり、担当者も頑張っていただけるし、マクビープラネットとしても大変助かります。
また、例えば人は褒められると嬉しいし、出世意欲が強い人も一定数いるかと思います。
その中で、細かいですが、金融機関の社長が来訪された際に、担当者と良い関係性であることを話すと、社長や担当者も喜んでいただけ、より良い関係性が築きやすいです。
−−やはり、ビジネスの根幹は、人対人の信頼関係が重要になってきますね。
本日は学びが多いインタビューをありがとうございました。
引き続きマクビープラネット のさらなる成長を応援させていただきます!
□ (株)Macbee Planetとは
Macbee PlanetはLTVマーケティングという消費者のLTV(顧客生涯価値)を予測して広告を最適化し、広告主の成長を支援するコンセプトにより急成長中の会社です。
成果報酬型のインターネット広告で同等規模のネットマーケティング社の買収に合意し規模を拡大。LTVマーケティングのリーディングカンパニーとして市場を開拓。
会社名: 株式会社Macbee Planet
所在地:東京都渋谷区渋谷3-11-11
代表者名 代表取締役社長 千葉 知裕
証券コード:7095
設立日:2015年8月25日
事業内容:成果報酬マーケティング事業
会社情報URL:https://macbee-planet.com/
□ ストラテジーキャンパスとは
当社は主に国内の企業を対象とした、事業創出コンサルティング、実行支援のサービスを提供しており、豊富な知見とネットワークを活かした事業立ち上げ・実行を支援しています。
会社名:株式会社ストラテジーキャンパス
本社所在地:東京都渋谷区神宮前六丁目23番4号 桑野ビル2階
代表者:代表取締役社長 中村 陽二
設立日:2020年9月
会社情報URL:https://strategy-campus.jp/