2022年からストラテジーキャンパスは、デンソーウェーブのビジネス開発室のご支援を始め、主に新規事業に関するサポートをさせていただいています。
デンソーウェーブは、モノづくりの現場で培ってきた、産業用ロボットや自動認識の技術や知見・経験を活用し、さまざまな分野で革新的なソリューションを提供されています。
もともと技術開発を強みとしていましたが、特に近年では市場のニーズを的確に捉え、新たな事業機会を創出するための取り組みにも力を入れていて、その一環として、ビジネス開発室を立ち上げ、社内外のリソースを活用しながら、新規事業の開発を進めていると伺っています。
当初、技術視点で社内リソースを活用した新規事業に取り組んでいましたが、マーケット起点でより幅広い領域のビジネス開発を進めるにあたり、外部との連携や市場の視点を取り入れることが重要と考え、当社の支援を活用いただきました。
当社は、単なるフレームワークの提供にとどまらず、実務に即した支援を強みとしています。ビジネス開発室の皆様がどのように当社の支援を活用し、新規事業の創出に取り組んでいるのか。その過程で得た学びや成果について、インタビューを通じて詳しくご紹介します。
新規事業開発において、実際に行動し、試行錯誤を重ねることが成功への鍵となります。本記事では、ビジネス開発室が直面した課題や、当社との協働を通じて得た気づき、事業開発の実践的なプロセスについて深掘りしていきます。
PDFファイル URL:http://strategy-campus.jp/topics/wp-content/uploads/2025/03/Interview_densowave.pdf
デンソーウェーブ・ビジネス開発室 星名一平氏
−− 本日はよろしくお願いいたします。
デンソーウェーブは、モノづくりの現場で培ってきた、産業用ロボットや自動認識の技術や知見・経験を活用し、革新的なソリューションを提供されていますよね。
特に近年は新規事業開発にも力を入れられておられ、その中で当社をご活用いただいています。
お話をお伺いするのをとても楽しみにしていました。
ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
−− 早速ですが、新規事業を本格的に立ち上げる動きはいつごろから始められたのでしょうか。
私が所属するビジネス開発室は2012年よりスタートしており、当社のコア技術を起点にイノベーション創出にチャレンジし始めました。
2018年頃からBizDev機能を強化し、マーケット起点・顧客起点にシフトしていったイメージになります。当初は技術探索が中心でしたが、次第に課題起点のアプローチへと進化しました。
−− ビジネス開発の新規事業の業界や領域はどのように定められているのでしょうか。
設立当初から業界・領域にとらわれず、全領域を対象にしています。
直近では、エネマネやインフラ、セキュリティの領域を注視しています。
私が入社した2020年当時のメンバーは5名程度で、改めて、ビジネス開発室としてMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明確にする合宿を実施し、「社内外のリソースを問わず、既存の枠組みを超えて、新しい課題を見つけていく。」というミッションを掲げて、事業を進めています。
−− なるほど。現在当社をご活用いただいていますが、外部の企業を活用しようとなった経緯を教えていただけますでしょうか。
当社が技術を強みとした企業となるので、自社だけでは新規事業も技術視点に偏ってしまい、新しい視座が得にくいという課題がありました。
また、固定化されたメンバーではアイデアも枯渇していく感覚もありました。
そこで、外部との連携を深め、新しい発想を取り入れる必要があると考え始めました。
実際、オープンイノベーションの取り組みを進め、外部のネットワークとつながることで新たな視点を得ることができたと実感しています。
−− 特にメーカーであると、新規事業の発想も技術・商品起点になってしまいますよね。
「0 → 1」の新規事業に取り組む際、新しい領域を調査する「人員・部隊」が必要となり、これを内製化するかアウトソースするかが論点になってきますが、知見がないと初めから内製化は難しいですよね。
また、「アウトソース」には外部委託だけでなく、スタートアップにマイノリティ出資なども含まれてきます。
私のおすすめの方法としては、「内製化」と「アウトソース」の両方に取り組むことです。
「アウトソース」する際、自社で一定知見がなければ、どのようにコンサルを使えば良い変わらないですし、出資先もわかりません。
とてもよくわかります。
私たちもはじめは社内だけで行っていたのでわからないことばかりでした。
一方、実際にビジネス開発室として、新規事業に取り組んでいるからこそわかることがあると実感しています。
また、全てを外部委託してしまうと、社内にナレッジも蓄積されず、あまり良くない意味で外部企業に依存してしまうと感じてしまいます。
−− そうですよね。では、ストラテジーキャンパスをご活用いただき印象的だったことはありますでしょうか。
単なる「フレームワーク」に当てはめるコンサルティングではなく、「事業の根本的な考え方」や「実務に即した行動」を重視している点が非常に印象的です。
フレームワークは属人化を防ぎ、一定の再現性を確保できる良さがありますが、事業会社の現場では「行動」が最重要となります。
フレームワークを活用した戦略・計画が行動をともなっていないと、戦略・計画の意味をなしていないとも感じています。
その点、ストラテジーキャンパスは、実務で成果を出すことを重視されているコンサル会社で、このサポートがあったから前進出来ていると実感しています。
−− 私たちは如何に実務で成果が出せるかに重きをおいているので、そのように仰っていただきありがたいです。
また、世の中のトレンドとしても、フレームワークだけが独り歩きしてしまっている雰囲気がありますよね。
私はコンサルティング会社から事業会社を経験し、事業会社で「行動」が重要であると実感しましたので、現在のストラテジーキャンパスのコンサルティングのスタイルにいたります。
フレームワーク自体はとてもわかりやすく、社内外の説明などでも使い勝手が良いんですが、それに縛られると「フレームワーク症候群」になりかねないとも感じています。
−− 「フレームワーク症候群」にハマってしまう方も多いですよね。
その要因の一つとして、「正解」を追い求めてしまう方が多いのではないかと考えています。
フレームワークを活用すると、みんなが理解しやすく「正解らしいこと」にたどり着けますので。
そうですね。
実際私も新規事業を進めるにあたり、フレームワークから入り、エッセンスを拾えて満足していた時期がありました。
「正解」に関しても、仰られる通り、多くの方は答えが欲しく、フレームワークに飛びついてしまいがちですが、実践するにあたり中身が足りないと気づくことが多いかと思います。
−− ビジネス開発室では、自社内で新規事業を推進するにあたり、情報収集はどのようになされていたのでしょうか。
「まちなか探索レポート」という取り組みを行っており、実際に街に出て気づいたことをレポートし、従来考えたことがなかった視点を部内で共有しています。
また、新規事業の機会探索をしている業界のリーダーへインタビューを行い、業界のリアルな市場の感覚やインサイトを得るようにしています。
あとは、机上の議論となりますが、「もし〇〇業界から、△△がなくなったら、事業にどのような影響が起きるか?」や「特定の業界のサプライチェーンを川上から川下でマッピングし、当社としてどのような参入余地があるか?」などから考えることも行っていました。
−− なるほど。様々な施策に取り組まれていたんですね。
また、各業界の有識者へのインタビューは情報の鮮度や解像度が高くとても有益ですよね。
インタビューイーはどのように設定されていたのでしょうか。
知人を介して、属人的なコネクションを活用し、インタビューをさせていただいていました。
−− インタビューは紹介経由が有効ですよね。
初対面の方に正面からインタビューを申し込んでも、中々受け入れていただけませんので。
当社のようなコンサルティング会社をどのように探されていたのでしょうか。
コンサルティング会社を探していたチャネルはウェビナーです。
また、事業創造のための伴走パートナーとして、コンサルティング会社を活用する目的でいました。
そして、ウェビナーを介し、有名な大手ファームやデザインファームなどを含め、複数のコンサルティング会社とお話させていただきました。
ストラテジーキャンパスを活用させていただくまでは、デザイン思考を得意とするコンサルティング会社を活用させていただいていました。
デザインファームのご支援は新規事業を立案する「型」を学ぶ点でとても有益でした。
一定学習は行えたと考え、より実践的な伴走を求めて活用させていただくこととなりました。
学んだ型も実践的な支援のおかげで活かされており、私達の新規事業のステージも上がったと実感しています。
−− ありがとうございます。
コンサルティング会社の伴走支援に期待していることはどういった内容でしょうか。
コンサルを受ける企業側のステージやステータスにもよるかと思います。当時のビジネス開発室が求めることは事業課題を突破できる「現場感覚を持った鋭さ」でした。
貴社は、豊富な知見と実務経験があり、現場の感覚を持たれているのはもちろん、幅広い業界にネットワーキングが有り「現場感覚の鋭さ」を提供いただけています。
−− 机上や論理だけでなく、「現場感覚」は事業を動かす上で重要ですよね。
はい、多くのコンサルティング会社の事業伴走は、「形の綺麗さ」にこだわっている印象があります。
一方、ストラテジーキャンパスは形の綺麗さもあるんですが、現場を理解しているからこその「力技」や「気合い」なども合わせて、現場にしっくりくる形で実際の数字にも現れるご支援をいただいています。
また、アウトプットまでのスピードも早く、現場が円滑に回れているのもとてもありがたいです。
−− 事業を立ち上げた時は、だいたい「綺麗さ」ではなく、「力技」や「スピード」が必要になってきますよね。
はい。事業には論理だけでは動かせないことが多くあります。
また、貴社からは「力技」に加え、「インサイト」の大切さも学ばせていただきました。
新規事業のアイデアは複数浮かびますが、実際に事業として拡大し得るのかなどを考える際、「インサイト」が頼りになると痛感させていただきました。
−− 「インサイト」は重要ですよね。新規事業としてあり得そうなアイディアは大量にありますが、全ての調査は行えません。
なので、過去の知見などから「インサイト」を導き出し、絞り込んでいくことが大事になってきます。
初期のインサイトで一定領域を定め、軽くデスクトップリサーチを行い事業の仮説を立てると、領域に精通されている方にインタビューを行うなど、机上の調査よりも実務・行動に重きをおいたアプローチはとてもしっくりきました。
−− 調査対象の領域の中で実際に働かれている方は、だいたい正しい感覚を持っていますので、デスクトップサーチで悩むよりも、早い段階で有識者に聞いた方が効率良く進められると考えています。
−− 新規事業には「0 → 1」と「1 → 100」の2つがあると思います。
ビジネス開発室で、新規事業に取り組まれている中で、新規事業の「0 → 1」と「1 → 100」の進められ方の違いは、どのように捉えられていますか。
「1 → 100」の新規事業は、既存事業の延長とも捉えることもでき、一定社内リソースを活用して進めることができます。
一方、「0 → 1」は社内リソースがほとんど使えず、ビジネス開発室のメンバーや外部リソースを活用することとなり、「1 → 100」と比較すると進めにくいことも多いなという印象があります。
また、1つの考え方・観点として、自社のリソースや社外ネットワークを考慮した上でとなりますが、一定の規模の企業は「0 → 1」をしないという選択肢もあるかとも考えています。
−− なるほど。私も大企業は「0 → 1」に取り組むべきか、辞めるべきかを考えたことがあります。
現在の私の考えとしては「取り組むべき」と考えています。
「0 → 1」に取り組むことで、事業領域の可能性が広がることはもちろんですが、既存事業の拡大を考えた際、少し隣の領域に参入する時でも「0→1」と同じ動きが必要となり、「0 → 1」を熟知していると上手く参入できると考えています。
−− 新規事業では、パートナー企業と一緒に進める場面もあるかと思いますが、パートナー企業についてはどのように考えられていますか。
新規事業を進める上でパートナー企業はとても重要で、ストラテジーキャンパスは、様々な業界に強いコネクションを形成されておられ、自社では手配出来ない協業や商談をいくつも実現いただけています。
例えば、エンタメ領域の新規事業を策定するに当たり、大手エンタテインメントグループをご紹介いただき、その企業はパートナー企業でありながら、顧客側の視点もあるのでとても助かっています。
新規事業を策定する上で、顧客の反応が最も大切と考えていますが、次いでご紹介いただいた企業のような顧客パートナー企業が大切と考えています。
−−幅広い業界における強いコネクションは、 ストラテジーキャンパスの強みの1つとしてあります。
実際、事業を進めるにあたり、顧客の立場でもあるパートナー企業のサポートは大きいですよね。
はい。今回のエンタメ企業もですが、いきなりビジネス開発室が直接アプローチしても、中々取り扱ってくれなかったと思います。
貴社が、エンタメ企業とビジネス開発室の事業構想を示していただけたから、エンタメ企業も向き合っていただけたと考えており、この流れは今後も続けていければと考えています。
−− パートナー企業に振り向いてもらうために、魅力的な事業構想は大事ですよね。
−− 新規事業にリソースを投下する際、社内説明で気をつけられていることはありますか。
新規事業として1円でも実績を残すことに重きをおいています。
実績があると、行動が客観的な事実として残り、社内にも説得しやすくなります。
「こうなると思うんです」ではなく「こうなると予測していたんですが、実際はこうなりました。」の方が100倍良いです。
−− 社内説明に実績は大切ですよね。
他のお客様からも、社内説得をどうすればいいかと聞かれることが多いのですが、今までみてきた成功例で共通することは「数字の力」と「発言者が権限を持っているか」の2つが複合的に合わさっているかが重要と考えています。
説明する人の立場や今までの信頼関係などが、聞いている側の納得度に繋がりますよね。
また、挙げていただいたことに加えて、実際にプロダクトを作って見せることも重要かと考えています。
−− プロダクトもそうですよね。
では、リソースが限られる中、完璧なプロダクトを作ることは難しいと思いますが、意識していることはありますか。
社内にプロダクト開発を得意とする方が多く在籍しているので、プロダクトごとに各領域のプロに相談することが多いです。
−− 新規事業にも活かせる社内リソースの活用は大事ですよね。
社内に協力者がいることで、新規事業の進め方が大きく変わってくると実感しています。
−− 社内の方からサポートいただけるように良好な関係を築いていくことは重要ですね
社内の関係性やネットワークは、コンサルティング会社のような外部の企業では、構築したり改善しにくい部分がありますので。
−− 本日はお時間いただき、貴重なインタビューの機会をありがとうございました!
引き続き、デンソーウェーブのご発展とご活躍を楽しみにしています。
□ 株式会社デンソーウェーブとは
バーコード・QRコードリーダ、RFIDリーダの開発・設計・販売を手掛けるAUTO-ID事業、産業用小型ロボットの開発・設計・販売を手掛けるロボット事業、セキュリティコントローラ・プログラマブルコントローラの開発を担う制御機器事業、生産現場のIoTを提供するIoTソリューション事業の4つの分野で、産業界の生産性向上に寄与する製品をお届けしています。
会社名:株式会社デンソーウェーブ
所在地:愛知県知多郡阿久比町大字草木字芳池1番
代表者:代表取締役 相良 隆義
設立日:1976年6月
会社情報URL:https://www.denso-wave.com/
□ ストラテジーキャンパスとは
当社は主に国内の企業を対象とした、事業創出コンサルティング、実行支援のサービスを提供しており、豊富な知見とネットワークを活かした事業立ち上げ・実行を支援しています。
会社名:株式会社ストラテジーキャンパス
本社所在地:東京都渋谷区神宮前六丁目23番4号 桑野ビル2階
代表者:代表取締役社長 中村 陽二
設立日:2020年9月
会社情報URL:https://strategy-campus.jp/